ヘルシンキから電車で20分ほど。ロウヘラという小さな町の駅前に、線路にへばりつくようにこの教会は建っている。教会のイメージとはかけ離れた、高く聳える壁。それは淡い色の煉瓦張りの壁を何枚も立てかけた形で構成されている。この壁の屹立する様は、近くの白樺の林と同化して見えてくる。駅寄りに教会、その奥に教区センターを有したルター派の施設として1984年に竣工した。
礼拝堂の中に入ると、そこは光のベールに包まれた空間である。会衆席は横に広く配置され、正面聖壇周りには左右の壁から光がひだのように射し込んでいる。重なって見えていた壁が、礼拝堂内では光を幾重にも重ねる仕切りとなっている。その高い壁の合間から漏れる光が白く塗装された壁に当たり、その光がまた、天井から吊られたテキスタイルによって拡散されている。スリットから入る光の空間に、垂直性を強調するように天井からは無数のペンダント照明が吊り下げられている。それは星くずが瞬くように幻想的である。地元では「灯の教会」と呼ばれ親しまれている。
礼拝堂内のオルガンは、ドイツバロックの伝統を汲むフィンランド最大のパイプオルガンである。オルガンの外観デザインも、この教会を設計した建築家ユハ・レヴィスカの手によるもので、白で統一され礼拝堂内の空間と一体化している。聖壇周りは聖餐卓・説教卓・洗礼盤が全て白くデザインされているが、その各々に外部からの微妙に異なる光が降り注いでいる。案内の女性は、聖書まで白くするよう建築家が指定したと笑って話してくれた。
会衆席に座っていると、体が白い光に包まれていく感じを受けた。外の雪景色が礼拝堂内や心の内側まで沁み込んでくるかのようである。オルガンの音すら白く透き通った音に感じられる。壁や天井の重力を感じない浮遊感漂う祈りと賛美の空間であった。
文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より

