TRAVEL & SKETCH 32/36

テンペリアウキオ教会

フィンランド/ヘルシンキ

テンペリアウキオ教会のスケッチ(田淵 諭)
スケッチ:田淵 諭

フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルトの設計したフィンランディア・ホールを見学した。舞台では弦楽器奏者が練習をしていて、まろやかな響きに浸ることができた。それからもうひとつの目的地、ルター派(福音ルーテル派)のテンペリアウキオ教会に向かった。

住宅地にあるその教会は、丘になっている岩盤をくり抜き、上に円盤型の天井をかぶせたシンプルな構造である。掘削のノミ跡そのままの岩と、切り石を積み上げた壁に囲まれた礼拝堂を持つ。フィンランディア・ホールの温かな木の壁を見てきたばかりの目には、そのごつごつとした岩肌は厳しいものに映った。しかし、円盤型の天井とその壁を繋ぐ、放射状の梁間にある180枚のガラスからはたっぷりと光が射し込んでくる。採光のない地下に造られたカタコンベと違って、梁間からこぼれる光が祈りを安らかなものにしてくれる。長く暗い冬を過ごす国では、日の光を慈しむ心が、このような採光を生むのだろう。

集中式の席配置は、円形の礼拝堂と円形の天井と相まって求心性を感じさせる。ごつごつが生む音の乱反射は、絶妙の音響空間をつくり出したようで、礼拝以外にしばしばコンサートも開催される。日没後、外から眺めた教会は、ガラスから発する光と鉄骨の梁が輪になって広がり、まるでUFOの到来を思わせるようであった。デザインしたスオマライネン兄弟も素晴らしいが、このコンペ案を採用した教会側もすごい。

ヘルシンキ中央駅から西に約1kmのこの地区には、1930年代から教会を造る計画があったが、第二次世界大戦の勃発で中断。終戦後コンペが行われ、スオマライネン兄弟による設計案が採用され1969年完成した。予算の関係で当初案の1/4に縮小され、計画地の隣の岩山に建てられたという。まさしく「この岩の上に教会を建てよう」と言ったペテロの言葉を想起させる教会である。

文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より