TRAVEL & SKETCH 30/36

イマトラの教会

フィンランド/ヴオクセンニスカ

イマトラの教会のスケッチ(田淵 諭)
スケッチ:田淵 諭

19世紀後半世界各国で鉄とガラスが使われ出し、地域性の稀薄になった近代建築にあって、北欧の香り高い建築家アルヴァ・アアルトは異彩を放っている。そのアアルトの教会建築の代表作といわれるイマトラの教会(コルメン・ルスティ〔三十字架〕教会)は、1958年竣工。ヘルシンキの北東約260km、ロシアとの国境近くの都市ヴオクセンニスカ郊外にある。教会のだいぶ手前の白樺林から、白い独特な形をしたベルタワーが見え隠れし道案内をしてくれる。3つの鐘とその頂上には十字架が見える。各所に自由に開けられたトップライトの出っ張り、黒い屋根から流れ落ちるように繋がる白い壁が緑に映えて美しい。外観で唯一直線的なところがエントランスであり、広い芝生の敷地を歩いていくと自然にそのエントランスへと導かれる。

ホールは天井が低く抑えられ薄暗い。そこに3つのトップライトが開けられ、入ってくる者の心を祈りの空間へと誘う。礼拝堂は、有機的な曲線の天井と湾曲した壁に囲まれた豊かで柔らかな空間である。両脇の壁の頂部にはそれぞれの場所に合わせて窓が切り取られ、外からの光が天井にぶつかりながら会衆席に降り注いでいる。礼拝堂の平面は不整形であるが、違和感は感じずむしろ心地よい。聖壇左側にルター派独特の説教台が据えられ、正面には3本の白い十字架が掲げられている。聖壇右側上部には曲面天井のカーブに合わせてパイプオルガンが収められている。800人収容の礼拝堂であるが、電動の間仕切りで3つに分割できる。天井のうねりと分けられる空間のつくり方でこぢんまりした感じすら受ける。鐘、トップライト、十字架、仕切り……と、キリスト教にまつわる「3」をテーマに設計されていることもわかってきた。

この日一組の結婚式に出席することができた。パイプオルガンの音色や讃美歌の響きを体感することができ、彼が教会設計でめざした祈りの空間を堪能した一日であった。

文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より