TRAVEL & SKETCH 29/36

MIT礼拝堂

アメリカ/ケンブリッジ

MIT礼拝堂のスケッチ(田淵 諭)
スケッチ:田淵 諭

ボストン郊外にあるマサチューセッツ工科大学といえば、世界屈指の理工系大学。多くの国から人種、宗教を超え集まった学生が学ぶ。広大なキャンパスには、巧みにデザインされたランドスケープの中に木陰が憩いの場をつくり、学生はその下の芝で語らう。

このMIT礼拝堂(クレスゲ礼拝堂)は、広いキャンパスの遥か先から、その特異な外観で辺りの空間を引き締める。直径17m、高さ11mの煉瓦張りの円筒が、林を背景に芝生の上に置かれている。屋上に見える彫刻家ロザックによるベルタワーがなければ、切り妻屋根の教会を見慣れた人はモニュメントか集会施設かと見過ごしてしまうかもしれない。

礼拝堂に近づくと、模様を変えた透明ガラスのステンドグラスで囲まれたエントランスが迎えてくれる。ここを左に向かうと礼拝堂である。礼拝堂に足を踏み入れるととたんに息を呑む。聖壇の上へ向けて光が昇っていくのが見えるからである。まるでヤコブが夢に見た、天使の昇り降りする階段(創世記28:10–22)のようだ。近づくと、聖壇から上部に向けて付けられた金属片の彫刻に、トップライトからの光が反射して雲の流れを映していることがわかる。

会衆席は円形に並べられ、聖壇上の聖餐卓とこの光を囲む。礼拝堂へ取り込まれている光といえば、このトップライトと礼拝堂外周の床の境に切り取られた壁から入る外部の池をたゆたう光だけである。この光が壁に波紋を映し出し、光が呼吸をしているように感じられる。会衆席に座っていると、天から御言葉が降り注いでくるように感じられる。

この礼拝堂は宗派を超えて曜日ごとに礼拝が組まれている。グローバル化したアメリカのエキュメニカルな礼拝堂である。1955年フィンランド生まれの世界的な建築家エーロ・サーリネンが設計。1950年代の多くの作品でアメリカの代表的建築家として知られる。

文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より