ストックホルムの南、車で15分ほどのところにある「森の葬祭場」と呼ばれるこの施設は、広大な森に囲まれた敷地の中に礼拝堂、火葬場、納骨堂、墓地がある。
設計は、北欧の天才建築家でストックホルム市立図書館の設計でも知られるグンナー・アスプルンドと教会建築家として有名なシーグルド・レヴェレンツ。1915年国際コンペに2人で組んで当選したが、1935年からはアスプルンド1人が担当し1940年に完成した。
敷地入り口に立つと、丘の上の大きな十字架が目に入ってくる。これを目標に、木立と塀の間のなだらかな石畳を樹木や空、池を眺めながら登っていく。丘の上には礼拝堂が3カ所あり、それぞれ葬儀の列席人数に応じて使い分けられている。
敷地奥の「森の礼拝堂」と言われる建物は、民家を思わせる外観である。門には「今日は私、明日はあなた」と書かれている。この礼拝堂の中には、中央に棺を置く台、それを円形に囲む参列者の席が配置され、棺上部のドーム天井に穿たれたトップライトから礼拝空間いっぱいに光が射し込む構造になっている。故人を囲んだ礼拝が終わると、棺はそのままリフトで地下に下がり火葬される。故人との別れの間、他の葬儀の列席者との出会いを避ける配置計画、遺族待合室の温かな空間等、人の心を気遣う配慮が随所に見られる。
愛する家族や友人を神の御許にお返しする葬儀は、キリスト教にとって重要な礼拝のひとつである。この世の別れとしての礼拝のあり方の理想がここに形作られているように感じた。アスプルンド自身の葬儀も1940年ここで行われた。
アスプルンドの最高傑作であるだけでなく、近代建築とランドスケープの融合の最高傑作といわれる素晴らしい空間である。
文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より

