パリ郊外ル・ランシーにあるノートルダム聖堂は、駅前の大通り沿いに敷地いっぱいに正面を向き建っている。見上げると垂直線が強調され、コンクリート打ち放し面が迫ってくる。
設計はオーギュスト・ペレ。完成は1923年。当時は土木工事に使われるのが主だった安価で荒い素材の鉄筋コンクリートに、ペレは限りない可能性を見いだそうとした。竣工されると、「鉄筋コンクリートのサント・シャペル」と評判になった。彼は9つの教会堂を設計したが、これはその最初の作品であり、また彼の教会堂建築の頂点をなしている。
外観は石造りのゴシック建築をコンクリートで模しながら、限りなくシンプルにまとめている。フランス各地の、彫刻で覆われた教会の外壁を見慣れた目には、打ち放し面の荒さがむしろ新鮮ですらある。内部はステンドグラスから射し込む光に溢れる。外部と内部の大きな違いに驚く。側廊の壁、聖壇背後の壁まで、全てが抽象的なステンドグラスでできている。サント・シャペルを訪れた時は全身が色に染まっていく感動を覚えたが、ここでは色と光によって重力から解き放たれるような感覚に包まれた。
この礼拝堂は、直径約40㎝の繊細な柱28本を使って、約11m上部にヴォールト状の鉄筋コンクリートの屋根が架けられている。入り口からは緩いスロープで祭壇まで導かれ、祭壇周りには信徒の典礼参加の形を見て取ることができる。この教会堂は石のゴシック建築を鉄筋コンクリートで置き換えるとどうなるのかという疑問へのひとつの回答であり、その後の鉄筋コンクリート造教会建築の雛形となった。安い素材で豊かな空間をつくる教会建築の新たな可能性をも示した作品となった。
ペレの下からは多くの世界的建築家が輩出され、ル・コルビュジエはその筆頭でもある。レーモンド設計による東京女子大学の礼拝堂は、この教会堂のオマージュとして造られた。
文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より

