デンマークは人口の約75%がプロテスタント・ルター派であるという。
コペンハーゲン郊外に佇むこのルター派のグルントヴィ教会は、オルガン教会の愛称で親しまれ、その姿の美しさから街の観光ルートにもなっている。設計したのは画家で煉瓦の研究家でもあったイエンセン・クリントン。コンペで設計を任されたが、やがて設計は息子のカーレが引き継ぎ1921年から19年の歳月を掛けて1940年に完成した。5,000万個とも6,000万個ともいわれる一種類一色の煉瓦でこの教会は積み上げられている。デンマークの伝統職人の確かな技が、外観にストイックな品を醸し出している。近代建築初期の建築であり、ドイツで生まれた表現主義の影響を色濃く出した作品である。
この教会の前面にはイエンセンが同時期に設計した住宅群が同じような外観で繋がり、更にその前面には並木に導かれるように墓地が広がっている。教会後方にも、美しい庭を持つ集合住宅が繋がる。教会の周りに住宅群を配置しその外側を田園が囲むという、静けさと生活感とが微妙に混じり合う北欧独特の風情を持ったこの都市計画は、教会と街との融合の好例であろう。
会堂内は、外部と同じクリーム色の煉瓦と北欧の淡い光との競演である。光が呼吸をしているかのような礼拝堂は、神の息遣いすら感じさせる。床、柱、壁全てがこの煉瓦でできているが、まるでフェルトのようなふんわりした安心感に包まれる。礼拝堂は、デンマーク伝統の長廊式で整然と椅子が配置されている。さすが家具の本場だけあって、自然木の個別椅子は座り心地がいい。この光の中、どのような礼拝が行われているのだろうか。
各地で教会堂を見学していると、礼拝に参加してみたくなる空間と、そこまでは思わない空間があることに気づく。ここは、日曜日まで滞在を延ばしたい礼拝堂であった。
文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より

