TRAVEL & SKETCH 21/36

シュタインホフの礼拝堂

オーストリア/ウィーン

シュタインホフの礼拝堂のスケッチ(田淵 諭)
スケッチ:田淵 諭

ウィーン郊外に広がる森に広大な敷地を持つ病院があり、その一角にシュタインホフの礼拝堂は建っている。この建物を設計した建築家オットー・ワーグナーは、クリムト、シーレ、マーラー、コロマン・モーザーなどと共にウィーン世紀末の芸術家といわれる。

この教会の正式名は聖レオポルド教会で、1907年皇太子フランツ・フェルディナンド立ち会いの下に献堂された。小高い丘の上に建つこの礼拝堂を中心として、敷地内のそれぞれの建物が配置されている。

礼拝堂の外観は、ワーグナーの建築的理念により東方教会のギリシャ十字に倣って計画されている。街からの眺望を意識して中央には大きなドームが架かっているが、このドームの高さとは別に礼拝空間に合った天井が張られた空間は、その後の教会堂建築手法のひとつとなった。また、外壁は大理石をボルトで留めるという、当時では斬新な、その後は近代建築で使われる工法が用いられている。アルミを使うなど新しい試みも随所に見られる。様式建築が終焉し近代建築黎明期の教会建築である。

礼拝堂へは左右2カ所の入り口から導かれ、中央は「主の入り口」となっている。堂内は聖壇への視線が開けることを考慮し、わずかだがスロープがついている。礼拝堂内は、モーザーのステンドグラスによって、まばゆい光が射し込む。また、白一色に統一された陶器や琺瑯やガラスを、銅のフレームで縁取るといった新しい建築材料が内壁に使われている。

病院という場所柄、礼拝堂の周りには多くの療養患者が集まり日向ぼっこをしていた。弱き者たちが主に導かれ礼拝を守る姿を思い、この白く美しい礼拝空間を訪ねた私の心も洗われるようであった。

文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より