1980年、初めてこの教会を見た時の衝撃。一瞬大地の隆起かと錯覚を起こし、次に写真で見ていたサグラダ・ファミリアにそっくりだ!と思ったのだが、そのものだと認識した瞬間、その妖気というか情念に近寄るべきか離れるべきか身構えたことを思い出す。
この教会は当初建築家ビリャールによって設計が進められ、1882年に着工したが、基礎まで工事が進んだところで計画が頓挫。その計画を引き継いだのがアントニ・ガウディであった。この辺りが不思議なことにサン・ピエトロ大聖堂とよく似ている。
ガウディはこの建物の設計を31歳から手掛け、その後も名作を次々世に送り出したが、60歳を過ぎてからは他の設計依頼を断り、サグラダ・ファミリアの地下に寝泊まりしながら設計に没頭したという。
一見植物のようにも、粘土で気の向くままに造られたようにも見えるこの建築も、実は構造実験の繰り返しによって生まれた形なのである。放物線が集合化された、実に幾何学的で明快な建築である。当時石積み建築で始められた工事も、現在はCGを活用したり石を模したコンクリート塊を併用したり、100年に及ぶ建築技術の変遷を物語るものとなっている。完成されれば、1階には五廊式ネオ・ゴシックのバシリカ式礼拝堂、そして18本の塔の建つ雄大な建築になる予定である。建物の正面を飾る数々の彫刻を造っている現地の主任彫刻家外尾悦郎氏は、「私の仕事はひとつの捨て石です。次の人に継いでいくまで造り続けます」と語っていた。行くたびに建設は加速度を増すが、この時お会いした外尾氏とまだ4本だった前面の塔が目に焼きついている。
バルセロナでこの教会を見る機会があったら、サグラダ・ファミリアよりも大きなものとなる予定であったガウディ未完の名作コロニア・グエル教会の見学もぜひ勧めたい。
文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より

