TRAVEL & SKETCH 19/36

クワトロ・フォンターネ聖堂

イタリア/ローマ

クワトロ・フォンターネ聖堂のスケッチ(田淵 諭)
スケッチ:田淵 諭

ローマのテルミニ駅の近くに、四辻のそれぞれに噴水が組み込まれた建物のある珍しい交差点がある。この一角にクワトロ・フォンターネ聖堂がある。名前が表す通り四つの泉の教会である。バロック建築の傑作なのだが、人々はこの先にあるトレヴィの泉へと足早に通り過ぎていく。

ポルトガル語で「歪んだ真珠」という意味の示す通り、バロック建築は至るところが誇張され、躍動感に満ち、大げさとも言える空間と外観によって他の様式と見分けがつきやすい。この様式は、反宗教改革を推進するために教会の威信を高めようとしたとも、またルネッサンス建築の静的で端正なプロポーションの空間に飽きた人々が生み出したともいわれている。

聖堂の外観は、うねった壁面や極度の装飾、古典建築のアレンジなどでまとめられていて、過去の建築様式の引用や変形も見て取れて興味深い。礼拝堂は卵形の平面をしているが、これはバロック建築の特徴でもあり、集中式と長廊式の礼拝堂の利点をミックスした形となっている。礼拝堂内の柱はうねる壁に寄り添い、壁と一体化して天井のドームへと視線を導く。平面と呼応したこの卵形ドームには、十字架を基調とした幾何学模様がちりばめられている。ドームから漏れる柔らかな光に、現代的とさえ思える模様が映える。

1634年建築家ボッロミーニがスペインの修道会から依頼され、1646年にほぼ完成した。当時ベルニーニと人気を二分し、サン・ピエトロ大聖堂建設にも携わった稀代の建築家であったが、この聖堂のファサードの完成を待たずに自ら命を絶った。彼の建築思想は多くの建築家やヨーロッパ各地の教会に影響を与えた。

文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より