TRAVEL & SKETCH 17/36

ミコノス島のパラポルティアニ教会

ギリシャ/ミコノス島

ミコノス島のパラポルティアニ教会のスケッチ(田淵 諭)
スケッチ:田淵 諭

アテネを拠点としてエーゲ海の島々を訪ねる。パウロ伝道の旅を追体験するとともに、その土地によって異なる街並みや建築、教会堂に巡り合う喜びに溢れる。初期キリスト教会のバシリカ式会堂が発達した建築の多いローマに比べ、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルを中心とした東方キリスト教は、独特の文化・芸術・建築を花開かせた。

アテネには、側廊を三方に巡らせ、中央にペンデンティヴという十字型ドームをかぶせたギリシャ正教様式の教会堂が多い。この屋根は、トルコや中央アジアに多い半球屋根の民家に起源を発し、これを石積み構造に発展させたものである。ビザンティン様式ともいわれるこの教会堂は、上から見るとギリシャ十字と呼ばれる正十字形をしているのが特徴である。アトランティス伝説のあるサントリーニ島では、ペンデンティヴのみを残した半球青色屋根の私邸礼拝堂も見られる。

近くのミコノス島では、北アフリカのカスバの建築に似た平屋根密集型の街が形成されており、わずか85km²の島に教会が300以上もあるという。そんな島にあって異彩を放つのが真っ白な岩山のようなパラポルティアニ教会である。東西南北に向いて配された4つの教会。これらは、聖エフスタティオス、聖ソゾン、聖アナルギリ、聖アナスタシアを記念するものである。かつてエーゲ海の島々に造られた要塞、その要塞の裏門(パラポルティ)があったことから名付けられたというパラポルティアニ教会。東西教会分裂以前からあったのだろうか。16、17世紀徐々に建て増されたというが、オスマン帝国支配下でどのように信仰を守ってきたのだろう。観光名所であるが中を窺うことはできず、かき氷を固めたような不思議な形だけを楽しむ。内観は写真で見ることも叶わない。

観光客で賑わう夏、静けさを取り戻す季節、どのように人々は祈りを捧げるのだろうか。

文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より