TRAVEL & SKETCH 08/36

アーヘンの宮廷礼拝堂

ドイツ/アーヘン

アーヘンの宮廷礼拝堂のスケッチ(田淵 諭)
スケッチ:田淵 諭

ドイツ西端に位置するアーヘン。3km西方にはベルギーとオランダの国境が控える。駅から10分ほど歩いて石畳の旧市街地に入ると、煉瓦造りの建物越しにアーヘン大聖堂の塔が見え隠れする。広場は、移動カフェや臨時に設けられたイベントのテント、土産屋が立ち並び、観光客や大道芸人で活気に溢れている。

カロリング朝フランク王国のカール大帝はここに都を置き、この大聖堂で戴冠式を行ったといわれる。当時は政教一致で、カール大帝はキリスト教の指導者の立場も有していた。彼の命で西暦800年頃、当時のローマ式湯治場跡に、聖マリアに捧げる宮廷施設内礼拝堂を中心として大聖堂が建設された。その後600年にわたり増築が繰り返され、各時代の様式が混在する複雑な外観になっている。現在は、その後の巡礼の増大で増築されたゴシック期の内陣が連続している。この礼拝堂は、カロリング朝最大の遺構である。

直径15m、八角形の礼拝堂は天井高30mを超し、礼拝堂の周囲に2階建ての回廊を持つ集中式礼拝堂である。西側の玄関両脇には2つの螺旋階段があり、集中式であると同時に東西方向に軸線を併せ持つ構成となっている。

暗い回廊を抜けて礼拝堂に入ると、上部の窓から射す光によって、モザイクで彩られた聖書の物語がドームにかすかに浮かび上がっている。グレーと白の対比が美しい大理石の壁と柱が照らされ、中心性と上昇感が強く感じられる。フランク人建築家オドは、神の臨在を顕す方法としてこの垂直次元を強調する礼拝空間を完成させた。後にこの礼拝堂は集中式教会堂の規範となった。

バシリカ式礼拝堂を見慣れた私にとっては、初期キリスト教建築様式のもうひとつの形である集中式礼拝堂の魅力を改めて体感できた一日であった。

文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より