アヤソフィアはイスタンブールの旧市街地の外れにある。前面にはブルー・モスク、背面にはトプカプ宮殿が控える緑多い地域である。きらびやかなブルー・モスクとは対照的に、粉を吹いたような赤い外壁を見せながら静かに佇んでいる。この建築は、キリスト教の歴史に重要な位置を占めるだけでなく、建築史的にも最初にして最大規模のビザンティン建築となっている。建築様式としては、9世紀頃にギリシャ十字形の教会堂という新しい集中式教会堂となって完成型を見ることになる。東ローマ帝国誕生直後の360年に献堂され、何回かの焼失の後、現在の建築は537年にアンティミオスとイシドルスという2人の数学者で土木技師の指揮の下わずか5年で建設したものである。
平面的には三廊式バシリカ式で、箱形空間に直径約30mのペンデンティヴという四方に大きな穴の開いたドームが掛けられている。会堂内から見上げると、ドームが天から吊り下げられ、荘厳な神の光が地上の人々に賛美と共に降り注いでいるかのように見える。この独創的な空間の原型は、アブラハムがカナンの地へ向かう途中で過ごしたトルコ東部ハラン村付近に現存する泥のドーム屋根住居ではないかと思われる。教会の典礼を満足させる機能的な平面空間と、その空間を大小のドームと光で満たす垂直空間との見事なハーモニーに言葉もなく立ち尽くす。会堂内には、暗い中、光に浮かび上がったキリストのモザイクを見ることができる。これは、イコノクラスムで破壊されたり、塗り込められていたイコンが1923年、500年ぶりに復元されたものである。
建設当時の建築構造技術を考えると奇跡としか言いようのないアヤソフィア。その技にまさしく神の働きを見る思いであった。
文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より

