天に聳える

九段教会

日本キリスト教団|東京都千代田区|1994年竣工

九段教会
撮影:鈴木元彦
STORY

設計のはじまり

突然の良き知らせ

毎年恒例の多摩美主催「世界美術の旅20日間」の学生引率から帰ってきた春の宵、電話が鳴った。「九段教会牧師のKです。設計をお願いしたいので、急で申し訳ありませんが、明日の午後打ち合わせに来ていただけませんか」このタイミングは良き知らせと勝手に解釈。翌日、時差でボーッとした頭と嬉しい気持ちの交錯する中、打ち合わせに向かった。120周年記念で設計を依頼されたが、設計期間の限りなく少ない教会だった。

教会が完成して一番喜んでくれたのは、設計中三角形の外観とコンクリート打ち放し建築に反対していた一人の教会員だった。30年経った今でも、あの時のこの教会員の笑顔を思い出す。

CONCEPT

設計のことば

日本に現存するプロテスタント教会として120年の歴史を持つものは全国でわずか10を数えるにすぎない。九段教会はその長い歴史を、靖国神社の隣に建つ教会として位置付けられ、幾多の風雪に耐えてきたが、創立120周年記念事業として建て替えられた。

ヘレニズム彫刻の最高傑作といわれる《サモトラケのニケ》といわれる女神の彫刻が、ルーブル美術館の階段の踊り場に展示されている。この像は、2つの翼を大きく広げ全身に風を受け、舟の舳先で行く手を導いている。この像は、帆船に載っていたのではないかと想像されているが、その多くを失っているため、詳しくはわからない。ただ、「順風ではなく強い向かい風に向かって風に耐え立ち尽くしている」。日本におけるキリスト教の歴史も、九段の地におけるキリストの教会としてのこの教会の歴史も、おそらく《サモトラケのニケ》の載った舟の如く、イエス・キリストの御言葉を帆に受け、ある時は嬉しい知らせを、またある時は困難を帆に受け歩んできたであろうと想像し、これらのイメージをなんとか形として表現し形としてもメッセージが込められたらと思い計画を進めた。

建築設計の進め方や手法はいろいろあるが、今回はただ単にスケッチを描いたり模型を作るばかりでなく、イメージを散文にしてみたり、折り紙を作ってみたり、聖壇壁面パネル自作のため鋳物工場で粘土をこねたりといろいろなアプローチから設計に取り組むことができた。

文章:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)より

計画概要

所在地
東京都千代田区
教派
日本キリスト教団
敷地面積
476㎡
建築面積
365㎡
延床面積
913㎡
構造
RC造
階数
地上3階PH3階
設計期間
1993年4月–1993年11月
施工期間
1993年12月–1994年12月

設計クレジット

建築設計
大岡山建築設計研究所
担当
田淵諭/佐藤みどり/山口京子/柳勉/中村高淑/川口直子
構造設計
斎藤欽弥(団設計同人)
設備設計
小林好伸(鼎建築設備計画)
電気設備
杉田設備設計事務所
照明設計
Panasonic
音響設計
永田音響設計
ステンドグラス
橋村元弘/中野みどり(アトリエハシムラ)
建築施工
大明建設
家具設計
大岡山建築設計研究所