CONCEPT
設計のことば
日本に現存するプロテスタント教会として120年の歴史を持つものは全国でわずか10を数えるにすぎない。九段教会はその長い歴史を、靖国神社の隣に建つ教会として位置付けられ、幾多の風雪に耐えてきたが、創立120周年記念事業として建て替えられた。
ヘレニズム彫刻の最高傑作といわれる《サモトラケのニケ》といわれる女神の彫刻が、ルーブル美術館の階段の踊り場に展示されている。この像は、2つの翼を大きく広げ全身に風を受け、舟の舳先で行く手を導いている。この像は、帆船に載っていたのではないかと想像されているが、その多くを失っているため、詳しくはわからない。ただ、「順風ではなく強い向かい風に向かって風に耐え立ち尽くしている」。日本におけるキリスト教の歴史も、九段の地におけるキリストの教会としてのこの教会の歴史も、おそらく《サモトラケのニケ》の載った舟の如く、イエス・キリストの御言葉を帆に受け、ある時は嬉しい知らせを、またある時は困難を帆に受け歩んできたであろうと想像し、これらのイメージをなんとか形として表現し形としてもメッセージが込められたらと思い計画を進めた。
建築設計の進め方や手法はいろいろあるが、今回はただ単にスケッチを描いたり模型を作るばかりでなく、イメージを散文にしてみたり、折り紙を作ってみたり、聖壇壁面パネル自作のため鋳物工場で粘土をこねたりといろいろなアプローチから設計に取り組むことができた。
文章:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)より