建築雑誌を見ていた私は、ある国際コンペの記事と当選案の独特な模型に目が釘付けになった。それは、ニューミレニアムを祝うローマ教皇庁の「2000年にあと50の教会を」キャンペーンの一環として計画されたことから通称ジュビリー教会といわれる(「ジュビリー」とはレビ記25章の「ヨベルの年」のこと)。3枚の湾曲壁を建て、その壁の間をガラスで繋いだコンペ当選案は他のどの応募案よりも魅力的であった。2006年この教会が完成したというので早速訪ねた。設計は、アメリカ生まれの建築家リチャード・マイヤーである。
ローマの北東トル・トレ・テステ地区の核として計画されたこの教会には、司祭館と近隣のためのコミュニティ・センターが併設されている。同一半径の球から切り取られ三位一体を表した3枚のコンクリート湾曲壁(シェル)でできている外観は、シドニーのオペラ・ハウスを思わせる。曲がっていることで荷重への抵抗力を持つシェルは、柱や梁などの助けなしにシェル自身で自立している。
会堂の中に入ると、南側に位置する白いシェルと木材を多用した北側の垂直壁に挟まれたトップライトから明るい日射しが入っている。湾曲壁面に反射する光は体を優しく包み込み、卵の内部にいるような感覚のする居心地の良い会堂である。近年カトリック教会堂の席配置には集中式が多く見られるようになったが、この会堂の席配置はオーソドックスな長廊式配置である。会衆席の前方には磔にされたキリストが光の中に浮いて見える。
現代の教会建築を見ると、海外の、中でもカトリック教会が、形に関しては過去に囚われず、新しい会堂をめざして模索し、祈りや賛美の空間の可能性に挑んでいるように思う。構造力学を極め、最新の建築技術を駆使したこの会堂に、教会建築の新しい可能性を感じながらミサに参加することができた。
文章・スケッチ:田淵諭『光と祈りの礼拝堂』(教文館、2023)3章「旅とスケッチ 聖なる空間を訪ねて」より

